健康法「鍼灸治療」とは?仕組みや歴史について解説

健康の維持と病気の克服
健康法「鍼灸治療」とは?仕組みや歴史について解説

健康法「鍼灸治療」とは?仕組みや歴史について解説

心身のダルさがなかなか抜けない。具体的な病気というわけではないのに体調不良が回復しない。そんなときには「鍼灸治療」を受けてみるといいかもしれません。
ここでは、鍼灸治療の仕組みや歴史についてお伝えしていきます。

鍼灸治療の仕組みと考え方

鍼灸の基礎となっている東洋医学では、私たちの身体には頭からつま先まで多くのツボが点在していると考えられています。そのツボを鍼やお灸で刺激することにより、心身の不調を改善するのが鍼灸です。
鍼灸治療の大きな特徴は、施術によって体が元々持っている自然治癒力を引き出すところにあります。鍼などで皮膚を刺激することで、新陳代謝アップや血行促進にもなります。

日本における鍼灸治療の歴史

鍼灸は元々、今から二千年以上前に中国で生まれた治療法です。日本に伝来したのは6世紀ごろ。鍼灸を扱う医療職として、「鍼博士」「鍼生」といった官僚の役職が設けられました。

日本においては、平安時代までは灸治療が中心で、鍼治療は外科的な処置を行う際に用いられることが多かったそうです。平安時代の貴族や武将の手記(日記)などの文献には、灸治療を受けたことに関する記述が多く見られます。
また「徒然草」や「奥の細道」など有名な書物の中でも、治療の一環としてお灸が紹介されています。

室町時代になると、再び鍼が広く行われるようになります。鍼治療を行なう専門家の教育にも力が入れられ、盲人の鍼師である杉山和一を中心に、鍼灸の教育制度が確立されていきました。日本鍼灸の特徴である「管鍼法」が編み出されたのもこの時期です。
管鍼法は鍼を細い管に入れた状態で体に刺す方法。経験が浅い鍼灸師でも痛みを与えず治療を行なえるため、現在でも広く行われています。

明治時代に入ると、西洋医学が日本の医療の中心となっていきました。薬物療法や外科的処置などを中心とする西洋医学の治療法は、症状に対し即効性があり、有効性が高いと思われるようになっていったからです。

こうして古い時代に比べ陰を潜めて行った鍼灸治療ですが、近年、体の不調に対し根本的に働きかける治療法として、改めて世界的に注目を集めています。西洋医学の治療では改善が見られなかった症状に対しても改善が見られることもあり、その有用性が見直されています。

鍼灸治療に、痛みや熱さはあるのか

鍼治療には、ごく細い専用のステンレス製鍼を用います。肌の細胞を傷つけない細さであるため、痛みはほとんどないとされています。施術箇所によって多少の痛みが生じることもありますが、上記で少し触れた管鍼法の導入により、実際に感じる痛みはかなり軽減されています。

また灸には、直接もぐさを肌に載せ熱を与える方法と、間に薬草などを挟んで間接的に体に熱を与える方法があります。灸治療初心者の場合は間接的に熱を与える方法を行なうことが一般的です。この方法の場合はじんわりと温まる程度なので、熱さはほとんど感じません。

鍼灸治療は保険適用なのか

鍼灸治療を受ける上で気になるのが、保険適用かどうかという点です。日本の医療保険制度は非常に充実しており、原則的にはたった3割の自己負担で治療を受けられます。ちょっとした不調でも、気軽に診断してもらえるのは暮らしやすいといえるでしょう。
しかし、病院などで行う治療や手術の全てが保険適用される、というわけではありません。あくまで健康目的である必要があります。例えば、「綺麗になりたいから整形する」「印象アップのために歯を白くする」といったケースでは、全て自己負担になります。

では、鍼灸治療は保険適用になるのでしょうか?実は、場合によっては医療保険が適用されます。例えば神経痛やリウマチ、五十肩など…。どれも健康を害するもので、放置すると生活に不便を感じるでしょう。そのため、保険適用に該当します。
ただ、鍼灸の保険治療を受けるには、医師の同意書をもらわなければいけません。つまり、まずは病院やクリニックに行き、医師による治療は難しいと診断される必要があります。直接鍼灸院に通うと自己負担になってしまうので、ご注意ください。

鍼灸治療によって改善が期待される症状の例

鍼灸治療によって改善が期待される症状は多数ありますが、代表的なものといえば肩こりや腰痛。
肩こりや腰痛は姿勢や生活習慣、冷え、内蔵不調などから筋肉が緊張状態になり、血行が悪化することで起こります。それを改善するために、首から肩にかけての肩井(けんせい)や天りょう、腕にある手三里(てさんり)、列缺(れっけつ)などのツボを鍼灸で刺激していきます。
腰痛の場合には足にある崑崙(こんろん)や委陽(いちょう)などのツボを刺激して筋肉をほぐし、お尻にある環跳(かんちょう)を刺激して股関節の血行をよくしていきます。

そして近年は、鍼灸が脳梗塞の後遺症に対するリハビリにも活用されつつあります。鍼灸は不妊治療や終末期医療など、人間の一生を網羅できるといわれているもの。それぞれの時期にそれぞれの体調に合わせた治療を施すことで多くの症状をカバーできる、総合病院のような役割を期待されています。

鍼灸院を選ぶときの注意点

実際に鍼灸治療を受けようと考えたら、どこにするかを決めなくてはいけません。初めての場合、どのように鍼灸院を探せばいいのか、どんな鍼灸院が良い鍼灸院といえるのか、わからないことばかりだと思います。

鍼灸院を選ぶときの注意点としては、情報が充実しているかどうかです。まずは、ホームページを入念にチェックしましょう。中でも、料金や経歴に関してしっかりとした情報があれば、ある程度安心感があります。
逆に、施術にいくらかかるのかあいまいにしていたり、鍼灸師の情報がなかったりする場合、要注意。治療を受けて初めて、高い費用だと知らされてしまうかもしれません。
事前に料金体系などが明確な場所を選ぶようにしましょう。

鍼灸治療を施すのは、国家資格を持った専門家

実際に鍼灸治療を施す鍼灸師たちは、国家資格を持った東洋医学の専門家。国家資格をとるために、首都医校(鍼灸コース)のような学校に通うのが一般的です。
豊富な実習や専任教官による専門性の高い授業を通して、鍼灸師としてのスキルを身につけていきます。そのようにして力をつけた鍼灸師はコミュニケーションをとりながら患者の状態を把握し、使う鍼の太さや方向、もぐさの種類やお灸の回数などを決めて不調改善に導いてくれます。

現代の生活は、どうしても心身ともにストレスが溜まりやすいもの。体調を大きく崩してしまう前に、鍼灸治療で元気な身体を取り戻すといいでしょう。

最終更新日:2023/04/27

鍼灸イメージ画像

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